第一幕  1593年

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「ケヘヘヘ、今日も大漁だぁ!」 時刻は夜。 月の明かりに照らされた、薄暗い森の中を走る4人の男達。 黒い服に見を包み、黒手ぬぐいを覆面のように顔に縛った彼等は黒い大きな箱を小脇に抱え、隠れ家を目指して走っていた。 そう、彼らは泥棒。 堺の町にある酒屋から、大判がたくさん詰められた千両箱を2つ。誰にも気づかれずに盗んできた。 「おい、誰か追い掛けて来やぁしてないか?」 その一団の中の、がっしりとした体格で髭を生やした、いかにも親分という感じの男が言うと、 「いえ、足音は何も聞こえやせん。追っ手はいないようですぜ。」 と、殿(しんがり)を務めている男が答えた。 「よし。だが気を抜くな!いつ追っ手が現れるかわからねぇ。隠れ家に戻るまで気を引きしめろ。」 「「「へいっ!」」」 泥棒の一団が隠れ家まで後少しというところまで迫ったとき、いきなり脇の薮からたくさんの光が溢れ出した。 「うわぁー!なんだこれ!?」 「追っ手か!?おめぇら、すぐ近くの草村に隠れろ!」 彼らは親分の指示通りに素早く草村に身を隠すと、息を潜めて気配を消す。 光はまるで昼間の太陽のように煌々と輝くと、だんだんと収まってゆき、そして消えた。
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