第一幕  1593年

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うーん・・・ 玲人はどこからか聞こえる鳥の鳴き声によって、ゆっくりと目を覚ます。 まだ寝ぼけたままの頭で、今自分がいる場所がどこかを理解するために周りを見回した。 蜘蛛の巣が張っている薄汚い天井に、所々破れて穴が開いている障子。 「いてて・・・」 起き上がると同時に、頭に痛みが走る。玲人は頭を押さえた。 今まで気を失っていたのか、頭がクラクラする。それに、頭痛もある。 「どこだ?ここは・・・」 玲人は頭痛を堪えながら、今自分がいる場所がどこか、何故ここにいるのか必死で思い出そうとした。 何故ここにいるのか。その理由はすぐに見つかった。 ゙タイムワープ装置″だ。 あの装置の光に飲み込まれ、気がついたらここにいた。つまり、どこかの時代にタイムスリップしたことになる。 じゃあ、何年だ? 部屋の様子からして、ここは日本。しかもかなり昔のようだ。 障子に天井、畳が敷かれていない板間に茣蓙。それに床の間もある。 床の間に掛け軸はかけられていないが、こんなボロい部屋の割にはしっかりと作られている。 それに、脇には立派な違い棚まで。 ・・・違い棚? まてよ・・・ たしか授業でやったはずだ。 床の間に違い棚といえば、あの有名な書院造の部屋だ。 書院造は鎌倉時代にできた、武家風の部屋だといわれている。 じゃあ・・・ここは鎌倉時代!? いや、それ以降っていう事も考えられる。 玲人が必死に考えていると、誰かが廊下を歩いて来る足音が聞こえた。
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