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あいつはうちらの姿を見つけると、刀を振りかざして迫ってきた。その時の顔は忘れもしない。
父上と母上はうちの盾になって斬られた。うちは命からがら逃げ出すことができたけど、両親はもう助からなかった。
その後うちが裏道で泣いていたのを、親分が見つけて育ててくれたんだ。
玲人は前を行く凜さんの話を聞き、とても申し訳ない気持ちになった。
凜さんがこのような辛い過去を持っていることなんか知らずに、聞いてはいけないことを聞いてしまったと感じたからだ。
「・・・だから、うちは桃池厳輔を許さない!いつか必ず両親の敵をとって見せる!」
「凜さん・・・」
「フッ、ごめんね?暗い話して。ほら着いたよ。入りな。」
こちらを振り返った顔に浮かんでいた表情は、優しい笑顔だった。
凜さんは大きな障子の前で立ち止まる。
この障子の奥に、親分がいる。
親分って一体誰なんだろう?
もしかしたら歴史上有名な人物なのかもしれない。今の世は1593年。親分って呼ばれそうな人は・・・該当ナシ。
「どうしたの?ほら、遠慮はいらないから。」
凜さんは障子を開けると、今度は優しく背中を押して玲人を部屋の中へ進ませた。
その部屋の中は、玲人が目覚めたときにいた部屋とは比べものにならないほど綺麗だった。
床には畳がきちんと敷かれ、天井には蜘蛛の巣ではなく高級旅館の宴会場にあるような絵が描かれている。
その部屋の一番奥、上座には一見この部屋の雰囲気とは不釣り合いな男が座っていた。
まさか、この人が親分・・・!?
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