プロローグ

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ああ辛い・・・ いくらなんでもやり過ぎだろ、双方の切り返しを2分って。確かにスタミナを付けるのは大切だけど、相掛かりを5分もやった後でそれはもう地獄以外のなんでもない。 おかげで腕はまともに動かないし、帰り道で何度も自転車と共に転びそうになったり・・・ まあ大した怪我にはならなかったからよかったけど。 家について自転車を玄関の前に止めると、重い防具を背負い、竹刀を抱えて玄関の扉をくぐる。 ああもう、土曜日なのになんで剣道サークルの練習があるんだよ。ちっとも休みの日を満喫できない。 そもそもあの先生はなんなんだ?普段は優しいしおっとりしてるのに、防具を付けたら性格が180°も変わるなんて。 いや、540°だ。それくらい変わる。 まぁあの厳しい練習のおかげでだんだんと自分が強くなってるから感謝はしてるのだが。 鉛のように重い足を気力で動かし、二階にある自分の部屋に転がり込むと、竹刀と防具を床に落としてベッドに倒れ込む。 ああ、この瞬間が一番好きだ。 寝れば治る。傷も気力も、体力も。 あの人がそうなように。 俺は仰向けになると、壁に貼られているあの人のポスターを眺めた。 ロ○○ア・ゾ○。 誰でも知ってる人気アニメ、ワ○ピー○のキャラクターだ。 小学5年生の時に初めてゾ○の戦いを見て、一瞬で虜になった。 剣道を始めた理由だって、ゾ○みたいなすごい剣豪になるためだった。 そのゾ○のポスターを眺めていると、激しい練習の疲れがドッと押し寄せてきた。ああ、まぶたが重い・・・ 睡魔に勝てず、うとうとして今にも寝てしまいそうなときに 「玲人ー、ご飯よー!」 わーお、グッドタイミング! 渋々ベッドからはい上がると、頬を強くペシペシ叩いて一階の台所に向かった。
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