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「石川っ!?あの天下の大泥棒の!?」
玲人にとって、予想外の人物だった。
日本史の授業では一度名前が上がったことはあったが、詳しい資料が無い上に数多くの創作が加えられているので本当の姿は全く分からない人物。
その男が、目の前にいる・・・。
「がっはっはっはっ!天下の大泥棒か!こいつはいい。良い通り名だな!」
「ええ、そう呼ばれるほど有名なんですよ。お芝居の題材にされたり映画になったり、マンガの主人公にだってなってるんですからねっ!」
玲人は段々と興奮してきた。
信長や信繁ほど有名ではないが、歴史上の偉人に出会うことができたなんて!
そのせいでこの時代には無い映画やマンガといった単語を使っちゃったけど、まあいっか、気にしない。
「なるほどな、未来の世ではそんなにも有名なのか。で、わしはいつ死ぬのか?」
「えっ!?」
「お、親分!何と言う不吉なことを聞くのですか!?」
五右御門の質問に、俺と五右御門のそばで静かに話を聞いていた凜は驚きの声を上げる。
「別にいいじゃねぇか。そんなに有名ならおめぇ分かるよな?俺の死因は。」
「それは・・・」
五右御門の死因。
それは釜茹での刑に処せられたから。しかも処刑されるのは1594年。つまり、来年に。
大きな鉄釜でグラグラと沸き立つ熱湯・・・ではなく高温の油に一人の子供と共に突き落とされた。
このことからドラム缶風呂を五右御門風呂と呼ばれるようになったっけな。・・・ってそんな無駄知識は必要無い!
「なあ、わかるよな?」
五右御門はただ俺の目をずっと見据えている。
突き刺さるかような鋭い眼差しを受けた玲人は無言の圧力により渋々口を開いた。
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