プロローグ

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階段を下りると、台所に向かう前に洗面所に立ち寄って顔に水をかける。 熱っ!? なんでお湯が出てくるんだよ! 誰だよ、こんな真夏日にお湯を使ったのは! レバーを捻って冷たい水を出し、顔に何度もかける。そうしないと今にも寝てしまいそうで夕飯を食っていられない。 もう一度レバーを捻って水を止めると、タオルで顔についた水滴を拭った。 よし、目が覚めた! 台所に入ると、テーブルの周りにはすでに家族のみんなが集まっていた。 ・・・あれ、じいちゃんがいない。 「おかえりー、遅かったじゃん。」 姉貴がケータイから目を離さずに言った。また彼氏とのメールか?リア充め。 「ん。ところでじいちゃんは?」 「あ、そういえばいないな。」 俺の質問に父さんがあたりを見回しながら答えた。いや、もっと早くから気づけよ。 「どうせまた発明所でしょ。玲人、呼んできて。ほら、真莉乃(マリノ)もケータイをしまって!」 母さんに言われ、渋々ケータイを閉じてポケットにしまう姉貴。俺は小さくため息を着くと、踵を返して台所から出て行った。 「発明に夢中になっていたら、引っ張って来てね。」 台所から聞こえるように、婆ちゃんが大きな声で言った。 よし、引っ張って来よう。足を。 俺は靴を履くと、玄関扉を開いて家の裏にある大きな発明所に向かった。
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