Signal fire~狼煙

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* ふと、目が覚める。 だいぶ見慣れて来た、模様が入ったすりガラスの窓から入る陽光…静かな自然に囲まれたこの立地は、銃声も悲鳴も、そして喧騒すらも無い良い場所だった。 「こんなところで普通に生活してみたいな…。」 思わず口からそんな希望が漏れる。 そうしてベッドから視線をズラすと、シェリルがベッドの端にもたれかかる様にして寝ていた。 銃創やら打撲やらで傷ついた体を見て、いつもは同じベッドで寝ていたシェリルもさすがに気が引けたらしい━━━━本当ならベッドで寝る様に促すのだが、これはこれで彼女の寝顔がよく見えるのでまあ良しとしよう。 …昨晩、幹部達は船団やあの民間警察の連中との会合の為に外出した。 こうして無事に朝が迎えられたと言う事は、何事も無く準備が進んでいると考えて間違いないのだろうか。 ━━━━ダグラスは布団をはぎ取り、体を起こしてベッドに座る体勢になった。 気になり始めるとジッとしてはいられなくなった。 医者を名乗る男に診てもらった限りでは、骨折はしていないとのこと。 だが全身に傷や打撲、そして新しくできた銃創が痛み、体が弱音を吐きそうになる。 それでも立ち上がって、包帯が巻かれた体にTシャツとジーパンを身につけて部屋を出ようとする。 直後、制止する声。 「あ…どこ行くの?」 起こさない様に気をつけてはいたが、起こしてしまったらしい。 ダグラスはへへっ、と笑って誤魔化しながら言う。 「あれからどうなったか気になってさ。これから訊きに━━━━」 「ダメだって。死にかけてたんだよ?ちゃんと休める時に身体を休めないと。」 …頑なにベッドに戻そうとする。この頑固な性格はお父さん似かな。 なんて考えながら、シェリルにベッドに連行され、仕方なくダグラスはベッドに身体を横たえた。 「油断したらすぐ動くんだから…朝食もちゃんと持ってきてあげるからね。」 「俺はちゃんと動けるんだから━━━━」 「却下。」 …堅牢なシェリルの態度は、全く崩れる様子が無い。 参ったねこりゃ…などと思っていると、ノックが来訪者を知らせた。 「ミスター『ドラゴン』、お話が…。」 「ああ、どうぞ。」 ガチャッ━━━━ジョシュ…の代理の男だ。今はここを仕切っている。 「昨日の会合のお話を伝えに参りました。」 「ちょうど聞きに行こうと思ってたところだ。頼む。」
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