Signal fire~狼煙

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* 「どうだい、ソフィア。引っ張り出せそう?」 パソコンを操作して情報を洗い出しているソフィアは頷く。 「なかなか食い付きがいいわ。さすがに敏感ね。」 釣り上げようとしているのは、民間警察官と港湾警察。ここ数日はファミリーと連合に好きなようにやられてばかりで気が立っている。釣り上げるのはそう難しいことではない。 ましてや、こちらが垂れ流した情報は嘘ではない。 「いつもは横やりばっかりで邪魔だけど、税金分はせめて働いてもらわないとね。」 「税金を払ってない身分の台詞じゃないけどね。」 などとしょうもないやり取りをしていると、百合江が現れた。 「信太、こっちは準備できた。あいつら、もうポイントでスタンバイしてる。」 ━━━━今回の作戦は、簡単に言ってしまえば炙り出すのがメインだ。 あの座標データのポイントをつつき、追い込んで狩る…ポイントは全部で7ヶ所━━━━7分の1でシャミルにぶつかる。 情報を集めてシャミルがいるであろう場所は絞ったが、それでも確証はない。その手で仕留められれば御の字だ。 「ヤン、得物の準備は?」 「できてるよ。いきなりの注文だったからダージリンからグレネードは預かってこれなかったけど、部品取り寄せたからミニミも使える。」 「上等。リック、船は?」 (エンジンは絶好調さ。港湾警察なんかケツにくっついたりもできやしないよ。ジェットスキーも用意できてる。) 傍にいるヤンと操舵室のリックから返答があると、百合江は腕時計を見てやきもきしているようだった。 たまらず、信太は言う。 「ユリちゃん、準備は順調だ。まずは一服しよう。焦りは良くない。」 本当にシャミルを仕留めることができるのか…ここまで根回ししても百合江はまだ策を練り足りないらしい。 もちろん信太もそう。抜かりがあってはならないと気を張ってはいるが、それでも張りつめたままでは疲労し、肝心な時に実力を発揮できなくなってしまう事もある。 甲板に出た百合江を追って潮風にあたる信太。 ふと、百合江が言う。 「わかってる…落ち着けって言いたいんでしょ?」 「気持ちはわかる。家族を殺されて冷静になれる人間は少ない━━━━だから俺が傍にいる。突っ走ったら引き止めてやる。」 遠くに見える廃墟群を見ながら、百合江はこちらを見ようとはしない。 不意を突いて、信太は後ろから百合江を抱きしめた。 「な、何だよいきなり━━━━」
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