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「そろそろ時間だな。行くぞ。」
ガチャッ━━━━蒼一郎が言うと、3人は車を降りた。
デジタル表記の腕時計は午前1時55分…行動開始予定時刻の5分前。
先頭は紅二。続いて後ろには灰留と蒼一郎がつき、背中を守るのは絵梨花だ。
場所は釧路の繁華街…時間も時間だからか人影は減りつつあるものの、それでも賑わいはある。
…目標の建物は2ブロック先の雑居ビル。そのビル全体が売春宿になっており、そこがシャミルが潜伏しているのではないかと考えられているポイントの一つだった。
あの情報屋が提示してきた攻撃目標は7つ━━━━どこにシャミルがいるかわからなかったが、全てのポイントの周辺に動ける人員を待機させ、情報を垂れ流して釣れた警察連中をそのポイントに陽動(フェイク)として送り込む━━━━というのが今回の主な作戦だった。
目標である雑居ビルが人混みから見えた時、蒼一郎は予定通りである事を確認した。
雑居ビルの周りには明らかに一般人ではない厳つい連中の姿が多数。それにビルの周りがやたらと人が少ない。
警察連中が行動開始を前に人払いをしたんだろう。
そのビルを前方数十メートルに据えたまま、4人はすぐそばの建物の陰で止まった。
…もしシャミルが居れば、警察は当然ながら身柄を拘束しようとするだろう。
それに反応してシャミルが抵抗する━━━━つまりそれこそが行動開始のサインにもなる。
ふと警察らしい連中が群れ始め、そうしてゾロゾロと仲良く雑居ビルへと入る。傍から見れば、風俗店に団体様というなんとも不思議な光景にしか見えなかった。
…そして5分と経たず、一発の銃声。
それからはもう銃撃戦。
次から次へと破裂音が響き、雑居ビルから漏れたそれが建物と人の隙間を縫って空へと抜けた。
今か今かとベレッタを握る紅二に気付き、蒼一郎が小さく言う。
「まだだ。もっと警察に消耗してもらわなければならない。」
「おいしいトコだけ持っていくんだろ?わかってんよ。」
聞こえは悪いが、その通り。
関係のない事件にわざわざ首を突っ込んで、挙句、時間を無駄にするなど愚かしい事この上ない。
━━━━「おい!そっち1人逃げたぞ!」
警官の怒号だとすぐにわかった。
ビルの角から覗いてみると、確かにこちらに逃げてくる男らしい姿が見えた。
蒼一郎は男の足の動きを注視し…そして男が4人の隣りを過ぎようとした時、右足を下段へと振り払う。
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