41人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「信太!運転代われ!」
言うと早い。
百合江はジェットスキーのブレーキを作動させると傍の浅瀬に跳び、信太がすぐにジェットスキーのアクセルを握る。
廃墟群の東端に差しかかり、これ以上は陸地に逃走経路が広がってしまう…どうにかしてここで仕留めなければ━━━━
「シャミル!」
奴が廃墟に逃げ込むのを確認するや否や、百合江のマイクロウジが吠えて廃墟を食い散らかす。
━━━━ガチンッ。
マイクロウジの弾倉が空になり、百合江はすぐに予備の弾倉と入れ替えてシャミルを追いかけた。
…と、廃墟に入ると足音一つ聞こえない…。
高い天井と広いフロア。元々はホテルか何かだったのだろう、1階と2階は吹き抜けで長い階段が螺旋状にフロアを繋げていた。
ここを走り抜けるなんて、いくら強靭な身体を持っているからといっても一瞬では無理だ━━━━ここにきてかくれんぼとは遊び心満点な奴だ。
「わかったよ、アタシがオニってわけだな?ちゃんと隠れてないと穴だらけにしてやるからな?」
…「違いますよ。」
上━━━━見上げた天井。
百合江が反撃するより先に、シャミルの拳がマイクロウジの側面を叩き、百合江の手から鉄の塊が落ちた。
百合江の身体に馬乗りになったシャミルは、あの金髪をなびかせながらふふっと笑った。
「お元気そうで嬉しいですよ。しかもこうして触れ合えるとは。」
「うるさい!どけっ!」
抵抗する百合江の両腕はシャミルによって頭の上に伸ばされ、百合江は無防備な状態となった。
「こうしてゆっくりと触れ合えるのおは嬉しいのですが、あいにく時間が無いもので。それでは、ごきげんよう━━━━」
スッと腕が動く。
ヤバい━━━━覚悟した時、破裂音が響いた。
百合江の顔に飛び散る液体。
それが血液だと気付くのに一瞬の間を要した。
パンッパンッパンッパンッ━━━━銃声はシャミルの後方から響き、シャミルは一足で数メートルを跳んだかと思うと柱の陰へと姿を隠した。
「大丈夫か!」
破裂音の元は、信太が握るベレッタ。
信太は辺りを見渡しながら、百合江の傍でしゃがんだ。
「何もされてない。」
「されかけてたろ?先走んなって。」
百合江はムッとしながらもマイクロウジを拾い上げ、動作するのを確認すると改めてボルトを撃発位置まで戻す。
そこへヤンも現れ、これで頭数も揃った。
「あの変態金髪ヤローは絶対許さない…出て来な!シャミル!」
最初のコメントを投稿しよう!