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――それから10分後
「……要するにここは、肉体のみならず『鍛えたい』と望む技術や能力も鍛えられる、という場所なんですね?」
バランスボールに寄りかかり、なんとか上半身を起こしている状態で私が言った。
「どうしてこうなった!?」と疑問を持つ方もいるだろうが、残念ながら私の口からはあの地獄のような一時について話すことはできない。
どうしても気になる方は、マイケルにでも聞いてほしい。
「まぁ、大体は合ってるな」
大体は、か。
「確かに技術・能力も鍛えることはできるが、こっちはあくまで場所を貸すだけだ。道具は自分で持って来てもらう」
オッチャンの補足が入る。
「場所は貸すから後は勝手にしやがれ!」って感じか。
「で、話の流れでいくと、私はここで『何かを鍛える』という設定みたいですね」
話を本日の議題内容へと持っていく私。
何となくだが、この物語の内容が掴めてきた気もしない。
「そうみてぇだな」
他人事のように言うオッチャン。
ま、これは当然か。
――それで何を鍛えるか、か……。
この物語がこのジムで身体・技術・能力のいずれかを鍛える事が目的ならば、私は今から鍛えるモノを選ばなければならないな。
と言っても、特に鍛えるほどの技術も能力も持ち合わせてないからな……。
「…………」
期待に満ち溢れた眼差しを送る、マッチョさんズ。
その鬱陶しい眼差しを受け取った私は、ため息をついて一言。
「筋肉は鍛えませんからね」
私にピシリと釘を刺されて、声にならない叫び声を上げるマッチョさんズ。
まったく、何を期待していたんだか。
「おい、小僧」
オッチャンが話しかけてきた。
「この文は、てめぇが書いてんのか?」
この文? あぁ、物語のか。
「えぇ、まぁ」
厳密に言えば「私」ではないのだが。
まぁ実際に語っているのは私なので、「私が書いてる」と言っても間違いではないだろう。
「下手だな」
ほっとけ。
「素人でも、こんな文は書かねぇな」
深々とため息をつきながら、哀れむような眼差しで私を見るオッチャン。
流石にちょっと泣きたくなるのだが。
「やるかジジィ!」
……は?
オッチャンの言葉に対して『それくらい分かってる』と言ったつもりが、なぜか口が勝手に違うことを話した。
……まさか。
――某クリエーターによる「乗っ取り」か!?
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