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「どうしたんだい? 入らないのかい?」
爽やかな笑顔のまま、私に手招きしてくるマッチョさん。
「………」
無言無表情のまま、その場に立ち尽くす私。
古びた建物、立てつけの悪そうな扉、男性らしき掛け声、漂う筋肉臭。
そしてマッチョ。
これらのキーワードが導き出す真実は、一体…。
「ジムの前に佇む一人の若者…。これらのキーワードが導き出す真実は一体…」
ムーキムキな腕を組みながら、私と同じような事を呟いているマッチョさん。
だが、彼の示したキーワードは一つしかない。
「君がここに立つ理由は一つ!」
勝手に話を進めるマッチョさん。
「何と言っても、筋肉は漢の浪漫だからね!」
残念ながら私は女だ。
「逞しく引き締まったボディーライン! 力強く盛り上がった筋肉美! これほど素晴らしいものはない!」
言っておくが、私は細マッチョ派だ。
「君もこのジムでムキムキになりに来たんだね?」
どれをどう駆使したら、そういう結論が出るんですか?
「はっはっは、ジムに来た=筋肉を鍛えに来た、だろう?」
わぉ、なんて単純な発想。
さすがは、マッチョ=脳みそ筋肉伝説。
「さあ、僕と一緒にムキムキになろう! 今日から君も、マッチョの仲間入りだ!」
そう言うやいなや、マッチョさんは私の手首を掴んだ。
これはまさかの……。
強 制 入 会 フ ラ グ ?
――待て!!
このままだと面倒な事になると判断した私は、半ば強引に建物の中に連れて行こうとするマッチョさんを止めた。
そして、彼に対し一通り経緯を話す。
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