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突如現れた一人のヤ○ザさん。
人目見てそちら系の筋の方であると分かるその威圧感は、少なくともそんじょそこらのチンピラが出せるものではない。
緊張により高鳴る鼓動。ゆっくりと頬を伝う冷たい汗。
最悪のシナリオが頭をよぎる――。
「米屋の親父さん、たばこの値段どうでしたか?」
ダンディーマッチョさんが、馴れ馴れしい態度でヤ○ザさんに話しかける。
あぁ、なんて命知らずな……。
「ふん、べらぼうに高くて気軽に買えんようになったな」
ダンディーマッチョさんに対して、ごく普通に返事をするヤ○ザさん。
あれ? お二人さん、実はお知り合いだったの?
イマイチ状況を飲み込めていない私は、マイケルに解説を求めた。
「この人が『米屋のオッチャン』だよ。言わなかったかい?」
いや、初耳ですから。
というか、このヒトが例の……か。
正直言って、こういう人には極力関わりたくないのだが。
そんな事を考えてるとこちらに気付いたのか、ヤ○ザ……いや米屋のオッチャンが私達の方を見てきた。
「なんだ、マイケル。てめぇは客が来たのに、茶の一つも出さねぇのか」
マイケルにジトリとした視線を向けて言うオッチャン。
「今さっき来たばかりなので……」
ポリポリと頬をかきながら答えるマイケル。なんだか、師匠と弟子みたいだ。
「で、小僧」
今度は私に視線を向ける米屋のオッチャン。
ドスのきいた野太い声が、オッチャンの恐さを引き立たせる。
「女です」
抑揚のない声で答える私。
私の返答を聞いたマッチョさんズが、ビックリした顔でこちらを見たのはあえてスルー。
「んなものは、どうでもいい」
あ、はい。そうですか。
「何しにきた」
「わかりません」
2秒で会話終了。
「……他に言う事はないのか」
呆れたようにオッチャンが言った。
「残念ながらあ……」
「ここに来た理由が分からないそうなんですよ」
私の台詞を遮ってマイケルが言った。
余計なことを……。
「どういう意味だ?」
鋭い眼差しでこちらを睨むオッチャン。怖い。
「……じ、実は――」
私は少し躊躇ったが、マイケルに話したのと同じ内容をオッチャンに話す。
「そういう事か……」
小さく呟くオッチャン。
「まぁ、とりあえず上がれ」
そう言ってオッチャンは、靴を脱いで受付の方へ歩いて行った。
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