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「このジムがどういうもんか、分かるか?」
受付の椅子に座るオッチャンが訊ねる。
「いえ、わかりません」
椅子……ではなく、バランスボールに座った私が答える。
建物――ジムの中に上がった私とオッチャンは、現在受付のカウンターを挟んだ状態で話していた。
私とオッチャンの会話が気になるのか、後ろの方でムーキムキマッチョさんズが興味津々な眼差しを向けている。
マッチョ×3。
非常に鬱陶しい事この上ない。
「このジムは昔、ボクシングジムだった事は知ってるな?」
「さっき、マイケルから聞きました」
(※マイケルト○ビア参照)
「昔やり手のボクサーだった俺は現役を引退した後、今から十数年前にボクシングジムを開いた」
静かな口調で、昔の自分について語り出すオッチャン。
「俺はここで何人もの若い選手を育て、世に送り出してきた」
へぇー。
「だがな……」
おっと、事件発生か?
「流石の俺も、年の瀬には勝てなくてな。一昨年の暮れに、俺はボクシングジムの看板を下ろし、この施設を民間に開放することにした」
まぁまぁ、そう言う事はよくあるよね。
「その頃僕は親父さんに、インストラクターに誘われたんだよ」
マイケル煩い。
「……と言っても、ただのスポーツセンタージムにするのは、まぁつまらんからなぁ。そこで俺は、ここを一般のとは違う具合に開放した」
見事なマイケルスルーで、話を続けるオッチャン。
流石はヤ○ザ……違うか。
「本人が望む物を鍛える場所(ジム)としてな」
んー……。やっぱりこの人、どう見てもヤ○ザの人にしか見えないよな。
あぁ、あれかな。
元々は血の気の多いヤ○ザのチンピラで、そっからボクシング選手になったとか?
――って…、なんか今重要な事言いました?
「……聞いてなかったのか?」
あ、スイマセン。
「エヘヘ……」
とりあえず笑ってごまかしてみる。
気のせいか目の錯覚か、オッチャンのこめかみに浮かぶ青筋が増えるワカメ。
あれ? 駄目っぽい?
「…………やるか?」
頬をポリポリとかいて笑う私の胸ぐらを、グワシと掴んできたオッチャン。
やるか? ヤるか?
ヤ ラ ナ イ カ ?
――アーーーー!!
奇声みたいな叫び声がジム内に響き渡る。
ちなみに、この後どうなったかは、皆さんのご想像にお任せします。
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