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――アイツの首からさげているエイリア石は、先端が欠けている。
その理由は、俺とアツヤしか知らない――
…どうして――
何故?
あんなに簡単に負けた…?最初は、圧倒的な差を見せ付けてたのに…!?
ボクは…信じられなかった。
ヤツの言葉で、皆の心が揺らぎ…一言で、エイリア石の「呪縛」を消してしまった――
「円堂…守……。」
ソイツの名を一言呟いて…僕は施設の一室へと足を運んだ。
その部屋には、円筒のガラスケースがいくつか並んでいる。
ほとんどが空で、何も入っていない。
―中心にある二つを除いて……
その二つには液体が満たされており、あの人が作り上げた「二人」が、そこにいる。
「アツヤ、守……」
後は目覚めるのを待つだけの二人の名前を呼んだ。
ボコボコと液体が音をたてただけだったけど……
「………」
―悔しい―
―悲しい―
―焦り―
―憤り―
―落ち着かない……―
……カチ
歯に硬質な物が当たったような音。
…気持ちが落ち着かない、精神不安定、情緒不安定。
感情が…気持ちが…グシャグシャになった時…ボクは、首からさげたエイリア石をくわえる。
…まぁ、たまに気が付いたらくわえてる時もあるけど……。
そのせいで石の先端部分は傷だらけで…
そんな事も構わず、ギリッと噛む力を強くした。
――ピキィッ
ジャラ……――
直後に何かが砕けた音、ネックレスのチェーンの音。
「…あぁ、とうとう欠けちゃった………」
手の中に落ちた欠けてしまったエイリア石を見て―――
『思い出せーー!!』
「…ッ。黙れ!!」
ヤツの声が聞こえた気がして、口内のエイリア石もそのままに…ギリギリと唇を噛んだ、血が伝うのも構わずに。
―…痛い
―痛くない、痛くない。
―どうでもいい
「……ははっ…そう簡単に終ると思ったら大間違いだからなぁ…次は、別のヤツも引き込んでやるよぉ……」
―…ヤツらに再び悪夢を……――
そう思って目を閉じた時、液体が一際ゴポッと音をたてた。
僕は目を閉じたまま、まだ口内にある石の欠片を血が混じった唾液と共に吐き出し、口元の血を拭いながら目を開けて…呟いた。
「…おはよう、守…」
目を覚ました彼は、先ほどまでの僕の独り言を聞いていたのか、僕を心配してるような表情だった。
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