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バハムートは大笑いしながら書庫の入り口へと向かう。
アイシャはというと、バハムートを薄情者を見るような目で見た後、再び本棚の中にある本を調べ始めた。
「ほら。それが人間界の扉を開ける本だ。」
バハムートが何かを片手にアイシャの元へ戻ってきた。
書庫には広辞苑のような厚さの本ばかりだというのにバハムートが人間界へ帰るための本だと持ってきたのは絵本のように薄い本だった。
アイシャは分厚い本ばかりに集中してこのような薄い本を見落としていたのだった。
「薄い本だからって同人誌だとは限らないんだぜ?wwwwwwwwww」
バハムートはまたも馬鹿笑いして本をアイシャに投げて寄越す。
「そんなに帰りたきゃ帰れ。
ただし、俺と約束をしてもらおうか。」
「なんです?」
バハムートの言葉にアイシャは顔を強張らせる。
「俺が飽きるまでこっちにいてもらおう。
勿論約束してそれを反故にして帰っても構わないよ。要は約束するのかしないのかだ。」
「約束・・・しましょう。」
アイシャは約束した。それが魔王の罠かもしれないと思いながらもアイシャは約束するしか手段が見えてこなかったのだ。
「俺は嘘を吐かない。帰りたきゃ帰ればいいさ。邪魔なんてしない。」
バハムートはアイシャに背を向けて扉へと歩いていく。
しかし、アイシャにはその背中が一瞬、どこかとても脆く、とても小さなものに見えた。
だからなのか・・・
「あなたが嘘を吐かないのなら私も嘘を吐きません。
約束は守りましょう。」
「はっはっは!暫くは退屈しそうにないな。」
アイシャはバハムートに追いつき、その隣を一緒に歩く。するとバハムートはアイシャの歩幅に合わせて自分の歩幅を狭める。
傍からその様子を見ればそれはよく似合いのカップルや夫婦のそれとなんら変わらないようだった。
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