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「お嬢さんもこんな部屋に突っ立ってないで一緒にランチでもどうだい?」
「ランチ?外は真っ暗ですが?
って、そんなことをしている暇があるのなら私を元の城に帰してください!」
「ふむ、作業中じゃなければそのヒステリーじみた声は不快だ。少し静かにしてるといい。」
バハムートが指を鳴らすとアイシャは金魚のように口をパクパクさせながらバハムートを睨みつけていたが、自分の声が出ていないことに気付くと自分の喉に両手を当てて自分の声を確かめていた。
「今君の声は出ないから無駄な努力はしない方がいい。体力の無駄だ。
まぁ、キャンキャン喚かないと約束してくれるなら戻してあげるよ。約束する?」
バハムートの問いかけにアイシャは首を縦に振る。
それを見てバハムートはもう一度指を鳴らす。
「・・・・・」
「ん?」
無言で睨むアイシャにバハムートは首を傾げて唇をアイシャの唇に接触させる。
「な、な、な・・・」
「たかがキスくらいで狼狽するなんて可愛いねww」
笑いながらバハムートは先へと歩を進めた。
「たまには外でランチもいいな。
まぁ一日中夜の魔界じゃ興が無いかな。」
「あの・・・ランチを食べたら私を帰してくれるんですか?」
「どうしてそんなに帰りたがる?
嫌々結婚させられたんだろ?だったら帰る必要なんて無いだろ。」
「私の父は私が生まれる前に死んで、私を女手一つで育ててくれた母は体が弱いの。
だからセム王と結婚して母を支援してもらえていたのに・・・」
「ふーん・・・人間も大変だな。
親なんかの為に恋人と別れて好きでもない豚と結婚しなきゃならんとは・・・」
バハムートは感心したようにアイシャを眺める。
「親を「なんか」呼ばわりなんて魔族はどういう教育しているのかしら?」
「いやいや魔族も多分親を大切にしてると思うよ?俺の家臣で頻繁に故郷の親父さんに手紙出してる奴もいるし。」
「あなたの親の顔を見てみたいわ。」
「くっはは!そりゃいい!!俺も一目見てみたいもんだ。」
バハムートは軽く笑い飛ばして足を再び動かし始める。
「え?どういう「バーハームーーートーーーーーー!!!」
前方から凄まじい勢いで近付いて来る物体はバハムートの後頭部を赤い絨毯の敷かれた大理石の廊下に減り込ませた。
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