一章

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陣地と言っても大したものではない。 戦場だった平原の端にテントを張っているだけだ。 兵士は円陣を敷き、奇襲に備えて全周を警戒している。 そこに白髪の男が乗った巨大な馬車が近付いていく。 戦闘が終わったばかりだったが陣地を守る見張りの兵士は士気旺盛だった。 やってくる巨大な馬車を見付けると兵士の間に緊張が走る。 陣地に近付けないよう馬車を止めるため、兵士の方から近寄っていく。 白髪の男も兵士達の動きに気付くと陣地から離れた場所で停まる。 兵士は八人で半分は槍、半分はクロスボウを持って馬車を囲む。 「平原の方より来たが貴様は何者だ? 敵か、味方か」 槍を構えた兵士の一人が鋭い視線を向け、白髪の男を誰何(すいか)する。 「…………味方だ」 白髪の男はそれだけ言うと黙る。 「言葉だけでは信用出来ん。証拠を示せ! 示せないなら捕縛する!!」 兵士はそう言うと槍を持つ手に力を込める。
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