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白髪の男は向けられる穂先をぼんやり見ている。
「聞いているのか貴様!」
反応がないことにイラついた兵士は声を荒げる。
すると穂先から視線を動かし兵士の顔を見る。
「私はエーゼル傭兵団に所属している治癒師だ。
団長か、他の誰かに確認すれば分かる」
白髪の男はそう告げると陣地の方に目を向ける。
兵士はエーゼル傭兵団と治癒師と聞いて驚いていた。
エーゼル傭兵団は規模は小さいが実力も信頼もある集団で、かなり名前の通った傭兵団だ。
だが、白髪の男は兵士が見たところ若い。
若い傭兵は居ないこともないが、若い治癒師はほとんど居ない。
「本当にエーゼル傭兵団か? 間違いないのか?」
「くどい」
兵士が訝しむと白髪の男がジロリと睨む。
「時間の無駄だ。
エーゼル傭兵団に早く確認を取れ。
私の戦場はお前たちの後ろにあるんだ。
さっさと通せ」
「くっ……おい、エーゼル傭兵団を呼んでこい」
白髪の男の視線に気圧され、兵士の一人を行かせた。
「嘘だったら捕縛する。
いいな!」
兵士の言葉を白髪の男は無表情に聞き流していた。
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