一章

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白髪の男は向けられる穂先をぼんやり見ている。 「聞いているのか貴様!」 反応がないことにイラついた兵士は声を荒げる。 すると穂先から視線を動かし兵士の顔を見る。 「私はエーゼル傭兵団に所属している治癒師だ。 団長か、他の誰かに確認すれば分かる」 白髪の男はそう告げると陣地の方に目を向ける。 兵士はエーゼル傭兵団と治癒師と聞いて驚いていた。 エーゼル傭兵団は規模は小さいが実力も信頼もある集団で、かなり名前の通った傭兵団だ。 だが、白髪の男は兵士が見たところ若い。 若い傭兵は居ないこともないが、若い治癒師はほとんど居ない。 「本当にエーゼル傭兵団か? 間違いないのか?」 「くどい」 兵士が訝しむと白髪の男がジロリと睨む。 「時間の無駄だ。 エーゼル傭兵団に早く確認を取れ。 私の戦場はお前たちの後ろにあるんだ。 さっさと通せ」 「くっ……おい、エーゼル傭兵団を呼んでこい」 白髪の男の視線に気圧され、兵士の一人を行かせた。 「嘘だったら捕縛する。 いいな!」 兵士の言葉を白髪の男は無表情に聞き流していた。
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