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『怒ってないよ』
と。そう言いつつ、も。
あまり機嫌の良くないアキ先輩。
今日はアキ先輩の誕生日だというのに……。
はぁ……。
私は心の中で、そっとため息を吐いた。
ーーー
1階へ降りると、お兄ちゃん達はもうちゃんと着替えて、朝食の準備をしていた。
「お兄ちゃん、ナツ、おはよう。
「あ?ハル。おはよう」
すかさず返事をしてくれたのは、ナツ。
心なしか、ナツが恥ずかしそうに笑む。
お兄ちゃんと一緒に過ごしたナツ。
私は寝ぼけて散々だったけど、どうやらナツは『幸せな朝』を迎えたらしい。
「ねぇ……あれ?ママは?」
キッチンに。いつもいるハズのママの姿が見えなくて、私はお兄ちゃんに聞いてみた。
「はよ。
そこ。母さんからの書き置き。見てみ?」
ふむふむ。
なになに?
そこには、今日は撮影の予定が変更になって遠方に仕事なった事。
なので、状況によっては泊まりになる事が書いてあった。
ママはフードコーディネーター。
最近は雑誌によく載ったりしてるし、連載や特集が組まれてたりして、なかなか売れっ子の様。
しかもここ最近は、講演会に呼ばれたりして忙しいみたいだし。
ママの料理教室もなかなか盛況らしい。
「ふーん。
じゃ……シュウ。
今晩はオレが、ハルを預かる……よ?」
一緒に手紙を見ていたアキ先輩が、何気ない顔でそう言った。
っていうか、そこに私の意見は?
「別に。好きな様にすればいいけど……
ってかさ、アキ。
オマエも一応受験生なんだぜ?
勉強とかしねーの?」
お兄ちゃんは『心底呆れてる』と言わんばかりの顔をしている。
「するよ?
一応、受験生だからな」
アキ先輩は、涼しそうな顔でさらりとそう言うと「じゃ、決定な」と私に向かってニヤリと笑った。
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