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それから私は、大学進学の為に地元を離れる事になり、綾音さんが店長を務める雑貨屋のバイトを辞めた。
綾音さんと身体を重ねたのはあの一度きり。結局綾音さんは私の心だけを奪い、私の処女を奪いはしなかった。
しばらく綾音さんに心を縛られたままだった私も、いつしか普通に男の人に恋をして、普通に彼氏彼女として付き合い始めた。
彼に抱かれる度に、彼の最初の質問を思い出す。
『初めて?』
イエスと答えた私は卑怯者かも知れない。
綾音さんは、私がこうする事を望んでた。普通に男の人に“初めて”を捧げる事を。
だけど心の中では、いつだって綾音さんが私の“初めて”だった。
たとえ心が離れても、もう二度と会う事はなくても、私が死ぬまでその事実が消える事はない。
『First...』 おわり
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