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「……ない。……い…。」
ラウは横目でローズに目をやった。
ローズは肩を小刻みに震わせながら下を向いている。
「…怖くなんかない!」
突然顔を上げローズは自分に言い聞かせるようにいった。大声で言わなくてはいけないかのようにその声は必死だった。
「…。まぁ、いいが。途中でビビってちびんよ?」
「―…アハハハ。」
ラウが呆れた様子でみる。
その目は心底興味がないと言っている。
「怖くはないよ。ただ、身体が嫌がる。」
右手で震える左手首を掴み、少しでもその震えをなくそうとする。しかし、身体にそんなことをしても意味がないということなど本人もわかっている。
「怖いのと同じじゃねぇか。」
ため息とともにラウは言い捨てる。
「僕の中の人形の魂が殺すなって言ってる。もし…それが"怖さ"だったら…。そうだとしたら……。」
ローズが躊躇った瞬間ラウの周りの空気が凍った。
いや、全てが殺気となった。ラウの足下から風がふきおこる。
ラウは歯を噛み締め、ローズの首に右手を当てた。
ローズは完全に油断をしていた。
気づいた時にはもう遅い。彼の手が自分の首にあり、次に物凄い衝撃が身体を襲う。
ローズは壁に叩き付けられてはいた。
壁にひびが入り、ローズが叩き付けられたらところは一部落ちていた。
肺は空気を求めるが酸素が上手く吸えない。
「かっ…はっ…。」
やっと空気が吸えたと思えば苦しく、胸に激痛が走った。
「ざけんなよ!何てめぇがビビってんだよ!お前の存在自体が恐怖そのものだろうが!」
ラウの右手は人形(ドール)となっている。
普通の人間であれば即死だ。
ローズは驚き目を開く。口元から出た血を拭うと目を細めた。その目は冷たく、闇を見ている。
口角をあげ、乾いた笑い声を微かにだす。
「存在がね……。」
今までの雰囲気とは打って変わり、冷ややかに言った。
口元は笑っているが、目は笑っていない。ラウを見たままだ。目の奥には闇ばかりと思われた。
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