つきのした

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むかしむかし、あるところに吸血鬼(きゅうけつき)がいました。 吸血鬼とは、人間そっくりの、人の血を吸う化け物(ばけもの)です。 「あの蜜のような味と言ったら」 吸血鬼(きゅうけつき)は不老不死(ふろうふし)です。 永遠に年をとらず、腰が枯れ枝のように曲がったり顔がしわくちゃになる事もありません。 「人間はなんて不便なんだろう」 吸血鬼(きゅうけつき)は、伯爵(はくしゃく)と呼ばれ大変に怖れられました。 伯爵(はくしゃく)は、人の血を吸いつくして殺してしまうのです。 血を吸いつくされた死体はまるで干からびたヤモリか踏み潰(つぶ)された蜘蛛(くも)のようでした。 やがて薪を燃やした後の灰のようになって風に吹かれて消えてしまうのです。
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