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んー、とうねり声を上げ、空いている手で頭を掻きむしりながら話す。
「判らない」
「判らないって言う旦那が判らないですよ」
ごもっともに突っ込みながらジョセフはもう少し深く聞いてみる。
「折角助けて、次は助けを求められたんでしょ? 何もしないのですか?」
「……」
「違うでしょ? 本当はどうにかしてあげたいんじゃないんですかい?」
チンピラのような男には似合わない言い方で責める。それにより色々と否定をされた気分にシンラは陥る。
だが確かに彼は今迷っているのだ。
古い記憶の中で一緒にいた彼女と重なる純白の少女。
国を変えようと王宮から脱走し、一人立ち向かおうとするエルを放って置く事等出来ない。
力ならある。
ただ、勇気がなかった。
臆病者と呼ばれようと怒る事も反論する事も敵わないくらいにーー
彼女なら勇敢に行動をするだろうか?
うん。答えを聞くまでもなく必ずするだろうと元傭兵は思った。
「……そうかもしれないな」
そしてジョセフに肯定をする。
彼も聞いた瞬間、ヘヘっと笑ったような気がした。
関わりを持った時はあまり良いイメージがなかったが、意外に良い奴であった。
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