序章

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「ちっ、何も入ってねぇ」 舌打ちしながら少女を蹴る男の姿はおよそ人と呼べる者の行動ではなかった。 だがこのスラム街ではそれがごく当たり前で自分が全てなのだ。 生きたければ他人を見捨てる。 そうするのが一番賢く一番非道なのである。 「うぅ……ママ…パパ…」 「うっせぇ! ママもパパもここにはいねえよ!」 涙を流し、呻きながらも口にする言葉をチンピラの男は怒鳴り散らし一蹴する。 彼自身も少女が何も持ってなかったことに腹をたてているんだろ。 更に男は彼女の頭を足で踏みつけようとし始めた。
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