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「生きていれば幸せになれるかもしれないならどんなに辛くても生きろ」
まるで青年自身が自分に言い聞かせているようだった。
最後に彼は懐から何かを取りだし、少女へと渡す。
「……」
それはクッキーだった。砕けて形としてはとどめていなかったが紛れもなく彼女が昔美味しく口にしていた好物のお菓子だった。
数日間も食べ物を胃に入れてなかった少女はすぐさまクッキーを口の中に放り込んだ。
チンピラのような男は物欲しそうに見ていたがそんなのを尻目にしてボリボリと味わった。
「……美味しいよ…」
その瞬間一気に目から涙が溢れだした。
久しぶりの好物の味に両親と食べた頃の記憶を思い出し、泣いてしまったのだ。
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