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次の瞬間、あたしは抱きしめられてた。
なんでいきなり!?なんで?何、この展開!
パニック状態になりながらも必死で抵抗するけど離してくれない。
「ちょ、ちょっと…!はな、離して…」
「俺から目ぇ反らすな」
抱きしめられた状態だから耳元で声が聞こえてくる。
やっぱり女慣れしてる、いきなり抱きしめるとか何考えてんの!?
心の中で思ったけど、いきなり男の子に抱きしめられたりなんかして、戸惑ったり怖かったりで、言葉にならない。
「…ごめん」
抱きしめられてた腕が離されたと思ったら謝られた。
「いきなりこんなんナシだよな。でも…ずっとこうしたかった」
「えっ…?」
「広瀬、好きだよ」
「…」
「俺の彼女になってほしい」
「いきなりそんなこと言われても…」
困るよと言いかけてふと顔を見る。
グランドにいるときにしかしない真っ直ぐな目であたしを見てる。
それを見て真剣で、本気なんだって心から伝わった。
“信じて大丈夫”
確信した。
「よろしくお願いします」
と返すと、また抱きしめられた。
今度はさっきみたいな感情に任せた抱きしめ方じゃない。
壊れ物を扱うみたいに、優しく優しく抱きしめてくれた。
髪の毛、顔、首…色んな所に触れてくる。
触れられる度にドキッとする。
“この人が好き”
そう確信した男の子に触れられてるんだもん。
極度の緊張で苦しくなって、ようやく言えたのが
「……練習、戻らなくちゃでしょ?監督…」
だった。
でも…
「関係ねぇ」
て交わされた。
「俺の顔、見て」
そう言ってあたしのほっぺたに優しく触れる。
見て、て言われたって見れるわけない。
「広瀬…じゃない。伊吹、お前の今のこの顔、誰にも見せたくねぇ…可愛いすぎ」
熱を帯びた声色でそう言われた。
そんな感じで廉とあたしが彼氏彼女になったのは、高1の夏の初めのことだった。
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