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火葬場から小さな入れ物に納められた母が帰って来ると、まるで何事もなかったかのように静まり返った家に、喪服姿の私達だけが妙に浮き上がっているように思えた。
洋服に着替え、着物を片付けていると、不意に手元に涙が落ちた。
泣いている自分に気がつかなかった。
この年まで、近くに住み、何から何まで手を貸してくれた母が痴ほうになったとき、確かに(困った)と思った。
しかし、いつも元気な笑顔を絶やさず、病気になってからも誰にも迷惑を掛けず、ケーキを焼き続けていた母がこんなにも早く逝ってしまうなんて。
出来たなら、もっと面倒を見させて欲しかった。
会社に疲れたら辞めて、その時はしっかり介護しようと思っていたのに、母はそれさえ許してはくれなかった。
(着物の畳み方はこうだったかしら)そう思った瞬間に母が居ないことを思い知らされたのだった。
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