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「綺麗でしょ?」
はじめ、俺に話しているとわからなかった。
「無視?」
そこではじめて自分に聞かれているんだとわかり、視線を戻すと目の前に女性が立っていた。
さきほどまで空を見上げていた女性だ。
「君も、見てたよね?」
「あ、はい…。」
「空、好きなの?」
「いえ、ただあなたが見てたのでつられて…。」
そのときの俺はいきなりのことで緊張してすごくしどろもどろだったと思う。
なにより…
「あはは、私のせいってこと?」
ひどいなー、と笑う彼女が可愛かったから。
真っ白なワンピースにカーディガンを羽織って、さらりと流れる黒髪。
素直に綺麗だと思った。
「私好きなんだ、空見上げるの。」
「うん、綺麗ですね。」
「でしょ?でも、それだけじゃないんだなー。」
よく笑う人だと思った。
人見知りなんて言葉とはきっと無縁なんだろうな。
「それだけじゃないって?」
「空ってさ、でっかいじゃん?で、その空の下を私たちは生きて、歩いてる。そう思ったら、なんか悩みとか不安とかそーゆーの!全部吹っ飛んじゃいそうじゃない!?」
そして彼女はまた笑った。
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