極東支部に勤めてるんだがもう俺はだめかもしれない

3/14
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
――廃墟となった街を、足音が駆ける。 ひとり、ふたり……全部で四人の足音だ。 四人はそれぞれ両手で機械のような物を持っている。 戦闘を走るのは、片目が隠れるほど伸びた髪と茶色いコートが特徴の男。 それに続くのは女性、前髪を同じ長さで揃えており、露出の多い服装をしている。 最後尾の青年はフード付きのコートを被り、時折背後を確認しながら前に続く。 この三人は見た目も年齢もまだ若い。 しかし最後尾の青年の前を走っている男は違った。 顎にはうっすらと髭を生やし、前髪は目に掛かる長さで、支給品の灰色のコートと黒のジーンズを身につけている。 見た目は30代後半から40代前半といったところで、四人の中では身長は一番高い。 そしてこの男性を含めた四人は、全員右手首に奇妙な腕輪をつけていた。 ――と、先頭の男が建物の角で立ち止まり、後ろの三人もそれに従って止まる。 男が物影から頭だけを出して様子を伺い、素早く頭を引っ込めた。 「いたぞ」 小声でつぶやく。 それを聞いた三人が身構える。 「ソーマ、俺と一緒に突っ込め。 サクヤは離れて援護。 ……あんたは――」 男が指示を出していく中、言葉が途切れる。 「あー……まぁ、死なない程度に援護でも頼む」 「つまりいつも通り、か」 「そうなる」 指示を出し終わり、男がまた様子を伺う。 最後尾にいた青年は、男の傍まで寄って来た。 「3秒後に仕掛ける。 3……2……1――」 直後、二人が物影から躍り出て疾駆する。 すぐあとに女性が続き最後に中年の男性が続いた。 「…なんでこうなっちまったかねぇ」 男性のつぶやきは、響く雄叫びにかき消された。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!