極東支部に勤めてるんだがもう俺はだめかもしれない

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「敵さんが逃げるぞ…!」 リンドウが言う通り、ヴァジュラは二人に背を向けて走り去る。 「追いましょう!」 「そろそろ弱っててくれると嬉しいんだがなぁ」 「…油断するな、また吹き飛ぶぞ」 ソーマに言われ、少々気に障ったが従っておく。 言い方はアレだが、こいつの言うことはもっともだ。 ……今まで油断するたびに痛い目に合ってきた俺だから、身にしみてわかる。 というより、そこだけ進歩してねえな俺。 少し落ち込みながらヴァジュラを追うと、一気に跳躍して、壁に空いた穴から廃墟に入って行った。 さすがにそこは高すぎてこのルートからじゃ追えないので、回り込んで別のルートから中へ入る。 廃墟となった教会に入ると、その隅っこにやつがいた。 瓦礫に向かって頭を伸ばし、食いついている。 何でも喰って取りこんでしまうアラガミは、傷つくとこんな風に近くにあるものを捕食し、細胞の結合力を回復しようとする。 しかし同時に、俺たちに大きな隙を見せることとなる。 サクヤだけは一定の距離で立ち止まり、俺達三人は忍び足で近づいて行く。 夢中で食事をしているヴァジュラはこちらに気づかない。 十分に近づいた俺たちは、一斉に神機を引いて構えた。 神機のオラクル細胞が変形し、刀身の上下に、それぞれ湾曲して伸びていく。 みるみるそれは獣の頭部のような形になった。 神機の『捕食形態』(プレデターフォーム)だ。 互いに目線で確認を取ると、一気に神機を突き出す。 直後にアラガミ細胞の顎が閉じられ、ヴァジュラの細胞に齧りつく。 やっと俺達の存在に気付いたヴァジュラが振り返る前に、神機を引き戻す。 『捕食』成功だ――! ヴァジュラのオラクル細胞を神機が取りこむことにより、神機が活性化する。 この『神機解放(バースト)モード』では神機が一時的――ヴァジュラから奪ったオラクル細胞の力を使い果すまでは、性能が格段に上がる。 また、神機と同じ傾向のオラクル細胞を投与され、神機とシンクロ状態にある俺達も、合わせて身体能力が向上する。
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