4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「敵さんが逃げるぞ…!」
リンドウが言う通り、ヴァジュラは二人に背を向けて走り去る。
「追いましょう!」
「そろそろ弱っててくれると嬉しいんだがなぁ」
「…油断するな、また吹き飛ぶぞ」
ソーマに言われ、少々気に障ったが従っておく。
言い方はアレだが、こいつの言うことはもっともだ。
……今まで油断するたびに痛い目に合ってきた俺だから、身にしみてわかる。
というより、そこだけ進歩してねえな俺。
少し落ち込みながらヴァジュラを追うと、一気に跳躍して、壁に空いた穴から廃墟に入って行った。
さすがにそこは高すぎてこのルートからじゃ追えないので、回り込んで別のルートから中へ入る。
廃墟となった教会に入ると、その隅っこにやつがいた。
瓦礫に向かって頭を伸ばし、食いついている。
何でも喰って取りこんでしまうアラガミは、傷つくとこんな風に近くにあるものを捕食し、細胞の結合力を回復しようとする。
しかし同時に、俺たちに大きな隙を見せることとなる。
サクヤだけは一定の距離で立ち止まり、俺達三人は忍び足で近づいて行く。
夢中で食事をしているヴァジュラはこちらに気づかない。
十分に近づいた俺たちは、一斉に神機を引いて構えた。
神機のオラクル細胞が変形し、刀身の上下に、それぞれ湾曲して伸びていく。
みるみるそれは獣の頭部のような形になった。
神機の『捕食形態』(プレデターフォーム)だ。
互いに目線で確認を取ると、一気に神機を突き出す。
直後にアラガミ細胞の顎が閉じられ、ヴァジュラの細胞に齧りつく。
やっと俺達の存在に気付いたヴァジュラが振り返る前に、神機を引き戻す。
『捕食』成功だ――!
ヴァジュラのオラクル細胞を神機が取りこむことにより、神機が活性化する。
この『神機解放(バースト)モード』では神機が一時的――ヴァジュラから奪ったオラクル細胞の力を使い果すまでは、性能が格段に上がる。
また、神機と同じ傾向のオラクル細胞を投与され、神機とシンクロ状態にある俺達も、合わせて身体能力が向上する。
最初のコメントを投稿しよう!