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――僕は、本を読みながら剣を振っていた。錆付いた鉄の壁にこびりついた染みも、今はもう慣れた。
僕にはもう、これしかない。
勉学と剣術がなくなれば、僕に残された道が一つになってしまう。発明道具と材料さえあれば、こんな所すぐに打ち壊して出ていってやるのに……!
今の僕はまるで家畜だ。食糧と知力と体力だけ与えて肥やし、太ったところで食い扶持にされる。
……そんなの、耐えられない、耐えてたまるか! だいたい何なんだ。退屈が嫌だったからこの世界に転生して来たんじゃないのか。それなのに、このままで終わってたまるか! 僕は虫系コアのグリードじゃないんだよ!
「食べなさい」
母上殿が、僕に野菜炒めを持ってくる。それは妹が残した物で、量はそれほどではなかった。だがそれがどうした。生きるためのプライドだ。生存戦略だ。僕は今までだってそうやって生きてきたんじゃないか。
這いつくばって足を引っ張ってしがみついて、必死だったんじゃないか。
あと少しだ。今の十五歳から二十歳になれば、僕は兵器を造るため、国に売られる。
兵器だ、兵器さえあれば僕は……僕は!
――あれ。
僕は、何をするん……いや。落ち着け、絶望してはいけない。いつも未来に向けて希望を持ち続けろ、僕。
そうだ、まずはこの腐った国を変えてやればいい。
そうすれば僕のような可哀想な人間はこれ以上出ない。そうだ、僕が変えてやるんだ。別に僕じゃなくてもいい。誰かを使えば、代わりにそいつを表舞台に立たせることもできる。
しかし母上殿。私に似て、とは本当に的を射た言葉でしたね。
ええ、僕は実に貴方好みの人間に育っていますよ。
――ああああ! 糞っ!
「飯、冷てえな畜生……」
冷えた野菜の甘みが、ひどく歯に凍みた気がした。
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