いつだって母は味方でいてくれるとは片腹痛し

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 そしてライキさんと下らない世間話をしている内に、三十人ほど同い年の人間が集まってきた。みんな、それぞれの友人とお喋りに勤しんでいる。  はて。二浪してでも入りたいという受験者が後を絶たないと聞いたが……一個上ならともかく、二個上なら目立つだろうに。周りに目を向けても、それっぽい人物は見当たらない。  そろそろ待つのも疲れてきたので、ライキさんに意識を向ける。 「かなり集まってきましたね。もう案内人を呼んでも良いのでしょうか」 「い、いいんじゃないですか?」  貰う必要のない許可を貰ったので、先程見つけた貼り紙を外すと、その裏には親指程の大きさの白いボタンがあった。そしてその下には小さい穴が無数に広がっている。とは言うものの、この穴の群れの面積も、やはり親指ぐらいの広さなのだが。  ボタンには『キケン!~何が合っても押すな~』と書いてあったが、本当に危険なものはこんなところに設置しないだろうと踏んで、迷わずに押した。  すると原理がどうなっているのかは分からないが、穴の群れから『ででーん。お前、アウトー』と女性の声が聞こえてきた。ふざけるな。 「手早く来てください、この怠慢案内人」 『手厳しいな。その頼みは了承しかねるぜ。私は今、アフタヌーンブレイクなんだ』 「手間のかかるわがままを言わないで下さい。嫌いますよ」 『手足が動きたくないと言ってるから無理だ』  そんな手足があってたまるか。 「手に職を持ってる人がそんなこと言っちゃいけません」 『手合わせしてくれるならいいぜ』 「手を抜いて下さるならいいですよ」 『手荒にやってやんよ。じゃ今から行くから、そこで十分ぐらい待ってろ』 「手短にお願いしますね」  手ばっかり言いやがって。疲れるこっちの身にもなってほしいよまったく。
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