いつだって母は味方でいてくれるとは片腹痛し

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 小さく息を吐いてレンガの壁の横に凭れかかると、一秒と経たない内にそこが動き始めた。  振り返って確認すると、深紅の髪をベリーショートにした、朱色の瞳の女性が壁を力ずくでずらしていた。 「むぅ……っ!」  女性が呻き声をあげて力を込めると、壁はドスン、と低音を響かせて停止した。見た目は壁だが、どうやら門の役割を果たしているようだ。  そして、門の分厚さを見て僕は驚愕した。なんとこの門、幅が十五センチ弱もあるのだ。そのうえ高さ二メートルで、横幅など僕が手を広げても足りないほどだ。  そんな重量のある門を、この女性は一人で開けたのだ。驚かない訳がない。  するとその女性は、僕を見てニヤリと口角を吊り上げた。彼女の強気な表情と自信を感じさせる顔立ちに、僕は思わず気圧された。 「てめえだよな、インターホンを鳴らしたのは」  僕の元いた世界ではただの通信機をインターホンとは呼ばない。が、とにかく、彼女があのふざけた会話の相手で間違いなさそうだ。  しかし当然ながら、手合わせするなどという不都合な約束を僕がそう簡単に覚えていると思われては困る。ここは一度、僕がどんな性格かをこの女性に身を以て理解していただかなくては。 「何の話ですか」 「声で分かった、お前だ」  んな理不尽な……。  いいや、こんなことで挫けてはいけない。まずは彼女が今何を考えているかを考えるんだ。そこから彼女の次の行動を割り出すことができれば、この状況を脱出できるはず。 「行くぞオラァッ!」  殴りかかってきた……だと?
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