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非常に、非常に残念なことに、僕は女の子に生まれてきてしまったらしかった。はぁ、憂鬱だ。
だが女の子なら社会的な地位の確立は楽だな。その点はよかった。
「あっ、笑いましたよ!」
「あらぁ……私に似て腹黒そうな笑い方ねぇ」
「いえいえ、そんなことは……」
看護士さんらしき中年の女性はそこまで言って口を濁す。やはり完全に「無い」とは言い切れないようだ。
「ふふ、ブラナーの第一子なんだからそうでなくちゃね。この子は将来大物になるわよぉ」
「くははっ」
「はは、また悪どい笑い方をしますね…」
おっと、話をしなくても母上殿が分かってくれたので、つい気分が良くなってしまった。この人とは仲良くやっていけそうである。
そうして和んでいると、厳格な雰囲気を纏った声の男性が騒音を響かせながら入ってきた。たぶん扉が壊れる音だったのだろうが、何も壊さなくても……。
「産まれたか! どこだ……そこかっ!」
彼は切羽詰まってもいないはずなのに急いで僕を探す。騒がしい人だな。
僕を見つけると、彼の足音が速さを増した。その後、興奮したような声をあげる。どうでもいいが、音だけで状況を判断するのは相当疲れる。
「何だ、この可愛さは……ぐっ、天使だ、天使が舞い降りた……」
「あらあら、それは私にも言ってましたよぉ」
「何を言ってるんだ。私が君に言ったのは大天使だよ」
「あらあらぁ?」
イチャついてんじゃねえよ。まあでも、ちょっと変なところもありはするが、悪い人ではなさそうだ。
この時僕は、この家族と生活するのが、少しだけ楽しみになってきていた。
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