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「あ、ほら。座って食え」
僕がリビングの扉をあけて中にはいれば裕兄がちょうど朝食を運んでいる最中だった。
こんがり焼けたトーストにコーンスープとサラダといった普通のメニュー。プラスでヨーグルトつき。
僕の家の朝の定番メニューだ。
僕は言われるがまま自分の席に着くとトーストにたっぷりとブルーベリージャムをつけて頬張った。
焼けたばかりのトーストは歯をたてればさく、としていてとてもおいしかった。
そう思っていると僕の向かいの席に裕兄が座り、僕と同じようにブルーベリージャムをつけてトーストを頬張った。
微妙な沈黙が嫌だった。
僕はそろりと裕兄を盗み見る。
裕兄は特に気になる様子もなく、いつものようにしていた。
…裕兄は、寂しいとかおもわないのかな―――。
僕がここまで兄を気にするのは訳がある。
それは裕兄の留学の事だ。
しかも、
出発日は今日。
この事を僕は一週間ほどまえに聞かさせた。
そういえば聞いた時の僕はショックで放心状態になったらしい。
あんまり覚えてないんだけど…。
裕兄は今大学生で医学の勉強をしている。僕のお母さんはガンで亡くなってしまった。
僕と裕兄は凄く悲しくてお葬式の時だってわんわん泣いてた。けどそんな中、僕たちの父親は他の女の人と遊んで挙げ句の果てには僕たち兄弟を捨ててその女の人とどこか遠くへと行ってしまった。たぶんそれらの事が切っ掛けで医学の勉強をしだしたんだと思う。
母さんが亡くなった当時、僕が8歳で裕兄が16歳だった。
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