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「すいません……」
「なんで遅刻したんだ?」
先生が少しにやけながら聞いてくる。
「ちょ……ちょっと参考書買ってました」
バレバレな嘘しか言えない俺。
「……今度から寝坊なんかするなよ。席に着け」
そそくさと逃げるようにして自分の席に行く。
姉の誕生日と松原の話で時間など頭から消え去っていた。
「ハハハ、危なかったな。お前またイヤホン取るの忘れて教室入ってきただろ」
席につくとすぐに隣の席の楢崎が声をかけてくる。
「ああ、忘れてた。時間前に来りゃイヤホンなんか気にしなくていいのにな。取られるとこだった」
「ハハッ、なら遅刻すんなよ」
もちろんクラスメートも思想が少し違うだけで優しいやつらばかりだ。
学級に通うのが億劫なわけじゃない、むしろ楽しい。
この生活がよりにもよって姉貴の誕生日に破壊されるなんて、この時には知る由もなかった。
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