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少女の見える丘 中枢
少年は何段もの階段を駆け登っていた。
音を立て、何者かに追われるように
右手には赤い剣。
左手には、少女の右の手。
「わ、忘れものだっ」
少年は静かに剣を鞘にしまい込み、少女に何かを差し出した。
「………」
少女は無言で受け取る。
するとそれを胸にあて、唄いだした。
何処へ向かう天の闇
名もなき花へ誘え
忘れゆくあの場所へ
連なる光の残像と共に消え
この身は朽ち果てぬ
唄が終わるとすぐに光が少女を包む。
安堵した様子で少年が手を離すと
「あなたも一緒に」
「えっ?」
少女は少年の手を掴んで光の中へと連れ込み、衝撃と共に二人は消えた。
それは少女の見える丘で。
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