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食欲もない。
何も手に付かない。
幸子が失踪してから、何も手につかなくなった。
幸子の手がかりは何もない。
夕べは、遅くまで幸子の家族や、幹夫の家族と、今後のことについて話をした。
どんなに話し合っても、幸子がいなければ結局意味がない。
幸子が帰って来たら、きちんと話し合う事になった。
でも、時間が経つにつれ、幸子が生きているのかどうか、不安になっていった。
幸子のいない生活など、幹夫はあり得ないと思った。
夕方頃、英里が訪ねてきた。
英里は、どかどかと部屋の中に上がり込むと、幹夫に抱きついた。
「辞めろよ、こんな時に!」
幹夫が初めて、英里に大きな声をあげた。
「幹夫さん、辛いのは分かるけど、今更後悔したって、仕方ないでしょ?」
英里は、幹夫に微笑んだ。
幹夫は、3日前まで激しく抱いた女を、まるで昔から憎んでいた仇を見るように、睨みつけた。
英里はその様子に動じる事もなく、ソファーに我が物顔で腰掛けた。
「あんなに愛してるって言ってくれたのに・・・」
今度はいきなり涙目で、幹夫をみた。
「すまない。でも幸子がいなくなって、分かったんだ。君とはもうこの関係をやめたいんだ。
勝手な事は分かってるが、頼むから此処には来ないでくれ。」
幹夫がそう言うと、
「散々私を抱いておいて、都合が良すぎるわ。私はあきらめない。」
英里はそう言って、帰っていった。
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