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幸子の写真を持ち、商店街の人達に聞いて回った。
もし、駅に向かっているのなら、必ずここを通るはずだ。
幹夫は、恥も外聞も捨て、聞き回った。
しかし、誰一人幸子を見たものは、現れなかった。
一日中駅や商店街を歩き回ったのに、何の収穫もなかった。
絶望の中で、幸子との出会いを思い出していた。
出会った頃は、3年間付き合った彼女に振られて、落ち込んでいた頃。
幸子がうちの会社に派遣で、やって来た。
最初見た時は、タイプではなかったが、一緒に仕事をするうちに、幸子の優しさに惹かれていった。
付き合ってからも、幸子は優しかった。
こいつと結婚したら、俺は幸せになれると思った。
現に幸せになった、俺は・・・・
でも幸子は、辛かっただろう。
幹夫がそんな事を考えながら、とぼとぼと歩いていると、商店街の人が声を掛けてきた。
「ねぇ、思い出したんだけど、4日前にこの人がお魚を買いにきてね、何でも今日は特別なんだって、タイを買っていったわよ。」
幹夫はその言葉に、膝がガクガク震えた。
(思い出した・・・あの日は結婚記念日だ・・・)
商店街の人が心配そうに、幹夫を見ていた。
幹夫は、魂の塊が抜けたように、ただただ、後悔していた。
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