失踪4日目

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お酒を飲みながら、幸子は、その男といろんな話をした。 久しぶりに、幹夫以外の男と話し、なぜか新鮮で、ドキドキした。 でも、幸子はそれ以上は、この男とは踏み出す事は、できないだろうと思った。 一夜を過ごす相手には、ふさわしくない。 左の薬指に、結婚指輪… その時点で、幸子はこの男と一夜を過ごす事はないと思った。 楽しいお酒の時間が過ぎて行く。 男は、幸子に言った。 「もしよかったら、これから二人で朝まで過ごしませんか?」 他人の事など、考えずにいれれば、きっとこの男に、一夜を捧げている事だろう。 でも、自分と同じように、この人の妻も、この人の帰りを待っているのだ。 幸子は男に言った。 「結婚してらっしゃるでしょ?」 男は、少し驚いたように言った。 「結婚してるのが、気になるのかい?会ったばかりだし、そんな事は気にする必要はないんだよ?」 でも、幸子は首を振った。 「あなたには、愛してくださる奥さんがいらっしゃるでしょ。その人を幸せにしてあげてください。私と一夜を過ごせば、奥さんは苦しむはずです。」 幸子は、そう言うと、その男が握ってきた手を振り解いた。 「ごきげんよう。」 幸子は、そう言うと男とお別れした。 今から一夜を共にする相手など、見つかるはずもない。 このまま、今日はホテルに戻る事にした。
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