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夜、遅く帰ると、家の明かりがついていない。
いつもなら、妻が遅くまで待っていてくれるのに。
幹夫は、玄関のドアを開けた。
(鍵がかかってない・・・)
真っ暗な部屋を、恐る恐る明るくして、部屋の中へと進んでいく。
夜ご飯が用意されている。
(今日は遅くなるって言ったのに。)
幹夫は、妻の幸子の親友、英里と、今日は会っていた。
浮気をしている。
お互い浮気だと、割り切った付き合いだ。
それはもう2年以上前から続いていた。
幸子はそのことに、まったく気づく様子もなく、英里と今日も会って、ホテルへ行って、お互いの欲求不満を解消する。
妻の幸子とのセックスは、月に一度。英里とは、週に一度。
浮気相手とのセックスの方が、燃えれるのは、何も自分だけではないはず。
現に、上司の井上も不倫をしているし、会社の大半は、そうであろう。
幹夫は、さして気にする様子もなく、ソファーに背広を投げた。
その時、
「パパ・・・」
息子の武が、幹夫を呼んだ。
「武、どうした? ママと出かけたんじゃないのか?」
そう言うと、武が俺に泣きながらしがみ付いて来た。
「パパ、ママがね・・・ママがね・・・」
尋常じゃない、泣き方だった。
「どうしたんだ?泣いてたらわかんないだろう?どうしたんだ?」
俺は武を落ち着かせるように、背中を擦った。
武は、まだ5歳になったばかりで、落ち着かせるのに、かなり時間がかかった。
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