1550人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
今朝、朝食を食べている時に、武ぐらいの歳の子を見た。
幸子は、胸が張り裂けそうだった。
武は、元気でいるのだろうか。
それだけが、どうしても気がかりだった。
この数日間で、あれだけ生えてこなかった髪の毛が、うっすら産毛のように生えてきた。
少し、開放されたような気分になっていた。
でも、幹夫の事や、英里の事を思い出すと、絶望的な気持ちになる。
たとえば、夫と離婚をして、武と二人で暮らす。だけど、幹夫を思い出し、英里とうまくやっているのかと、思うだけで、奈落の底に落とされる気持ちになる。
こんなに幹夫を愛している。
母親なら、子供のために生きて行けと、世間には後ろ指さされるだろう。
でも、武も大事だが、それ以上に、夫、幹夫を愛している。
男がいないと、生きていけない、そんな女にはなりたくなかったが、愛を知ってしまうと、もう後戻りはできない。
恋をすると、盲目になるのと同じだ。
悔しい・・・?
悲しい・・・?
なぜ、死のうとしている・・・?
死ぬ勇気があるなら、がむしゃらに生きればいい?
生きている地獄より、死んで地獄に落ちる方が、よっぽどマシだから。
だけど、なぜだろう。あの時抱いた死への執着心が薄れつつあった。
時間というものは、人の心を癒して行くのかも知れない。
幸子は、近くでプリペイド式の携帯電話を購入した。
最初のコメントを投稿しよう!