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「184」と頭につけて、幹夫の携帯電話に、電話を入れた。
プルル ガチャ
「はい、もしもし。」
愛しい夫の声がした。
幸子は、何も言えずにいた。
「もしもし!幸子か!!?? 切らずに、聞いてくれ!!」
幹夫の切羽詰った声に、何も言わずに幸子は聞いていた。
「武が、肺炎で入院した・・・幸子、戻ってきてくれ・・・俺が全部悪いんだ。幸子は何も悪くない。俺は、幸子が戻ってきてくれないと、ダメになってしまう・・・頼む、戻ってきてくれ。」
幸子は、武が入院した事に胸を痛めた。
でも、幹夫が泣いている事にもビックリした。
自分がいなくなれば、英里と飽きるまで一緒にいられるのに、なぜ?
幸子の中では、まだ整理ができなかった。
「幸子が家を出てから、幸子が俺と英里の事を知っていて、胸を痛めて、病院に通っている事、円形脱毛症になっていたことを知ったよ。
俺はダメな夫だ。君を失って、初めて、幸子の大切さに気がついた。
武に君が必要なように、俺にとっても、幸子が必要なんだ。
戻ってきて欲しい。許して欲しい。頼む、何か言ってくれ。」
幹夫の溢れ出す涙を、電話越しでも感じていた。
許せるのか?
最初から、許している。
愛せるのか?
すごく、愛している。
だからこそ、失うのが怖かった。
失う事だけが怖くて、死を選ぼうとしていた。
幹夫は、英里のところへ行ってしまうんじゃないかって、思っていた。
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