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「もしもし・・・」
幸子は、声を出した。
「幸子!」
幹夫は、何度も幸子と呼んだ。
「ごめんなさい、私が弱いばかりに、武や、あなたに迷惑かけてしまって、本当にごめんなさい・・・」
「なんで、幸子が謝るんだよ。悪いのは全部俺なのに。幸子、会って話をしよう。電話じゃ、想いを伝えられない。戻ってきてくれ。もし戻れないなら俺がそっちまで行くから。
頼む。幸子。頼むよ。」
「分かった・・・戻るわ。戻るから・・・」
幸子は、一度家に戻ってきちんと話をしようと思った。
夫の気持ちを、まだ聞いてもいないうちから、死を選ぶのはバカバカしい事だと、気づいた。
だけど、あの時は、精神状態がおかしくて、そんな事を考える余裕がなかった。
幸子は、しばらく滞在していたホテルを清算して、家に向った。
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