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チャイムが鳴った。
幸子と電話を切ってから、3時間程たっていたから、幸子だと思い、幹夫はうれしくて、玄関に向かい、扉を開けた。
「幹夫さん!」
そう言うと、英里が抱きついてきた。
お酒の匂いがぷんぷんする。
「おい、来るなと言っただろう!」
幹夫は、こんなところを幸子に見られたら、どうするのかと思い、英里を怒鳴りつけた。
「ひどい・・・ひどすぎるわ!」
英里は、大きな声を上げて、わめきだした。
その頃、幸子は5日ぶりの家に帰宅する途中だった。
これから、話し合えば、きっと何かが変わる。
そう信じていた。
家が近づくにつれ、何かもめるような声がしている。
よく聞くと、英里の声だった。
「私のお腹に赤ちゃんがいるの、幹夫さんの子供よ!!私は、幹夫さんの子供も産むし、幹夫さんとも別れない!!幸子なんかに、幹夫さんを渡さないわ!!!」
近所に聞こえるほどの、大きな声・・・
(英里のお腹に、幹夫の赤ちゃん・・・・)
幸子は、家の前まで来て、気がついたらまた駅に向っていた。
(何で・・・? 何で、浮気相手の英里が妊娠して、私はしてないの?
そんなに、愛し合っていたの?
私とは、1ヶ月に一度あるかないかだった・・・
それなのに、それなのに・・・英里とはどれぐらい愛し合ったの?)
幸子の死のうとする気持ちが、また強さを増した。
生きていても、やっぱり地獄。ならば、死んだ方がいい。
幸子は、元来た道を戻っていた。
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