失踪5日目

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「やめろ!!」 幹夫は、狂乱しそうになった。 英里の事が、鬱陶しくて仕方がない。 自分の言いたい事を、叫びまくって、幹夫の足にしがみついて離れようとしない。 幹夫は、英里を足で蹴った。 「帰れ、帰れ!!!」 「嫌、嫌、嫌!!!!」 英里の顔を蹴り続けるが、英里は、それでも幹夫から離れようとしない。 幹夫はおかしくなりそうだった。 いや、もう英里の顔や、お腹を蹴っているんだ。すでにおかしくなっている。 幹夫は、英里のしつこさにあきらめに似た気持ちになり、その場にへたり込んだ。 「幹夫さん、愛してるわ。離れたくない。」 血まみれになりながらも、幹夫を深く望んでいる。 そんな女が急に哀れになった。 幹夫は、英里を家の中に入れた。 その時、幹夫の電話が鳴った。 急いで、電話に出た。 「もしもし、幸子か!!」 幹夫は、精一杯幸子を呼んだ。 「ええ、幹夫さん、私やっぱり家には帰れないわ。 英里、妊娠したんですってね。」 幹夫は、血の気が引いた。 あのやりとりを、幸子は見ていたのだ。 「待って、幸子!!英里には、おろしてもらうつもりなんだ。」 その言葉を聞いた英里が、幹夫から携帯電話を強引に奪い取った。 「おい、何するんだ!!やめろ!!!」 「幸子なのね!!幸子、私は幹夫さんの子供を産むわ!!あんたなんかに、幹夫さんは渡さない!!!」 幹夫は、同情して家なんかに入れなければよかったと、後悔したと同時に、また英里が憎くなり、英里を殴った。 「や、やめて、幹夫さん。」 もう無我夢中だった。 電話を奪い取って、出た時、もうすでに電話は切られていた。 幹夫は、絶望的になった。 もう、幸子からの連絡はこれが最後になったかも知れない。 この女のせいで・・・ 自分の過ちをいつの間にか、英里一人に、擦り付けていた。 電話越しに、幹夫は確かに英里を殴っていた。 それが伝わった幸子は、悲しみに胸が痛かった。 幹夫は、自分が犯した過ちを英里のせいにしようとしている。 幸子は、それがわかってしまった。 あんなに優しかった幹夫が、変わってしまった。
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