1564人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日から、幸子の事を考えていた。
きっと、もう連絡が来る事はないだろう。
人生が絶望的に思えた。
英里と、あれだけ愛し合って、燃えていたのに、幸子の失踪から、英里に対して、憎しみしか沸かない。
昨日は、英里の鼻が折れるほど殴ってしまった。
病院に連れて行き、病院の人に事情を聞かれたが、英里は、ただ転んだだけだと言った。
この女は、俺に付き纏う気でいる。
一層の事、この男に殴られたのだと、言えばよかったのに。
幹夫は、英里と英里の中に宿っている子供について、何の興味もない。
むしろ、この女が明日にでも、子供を流産してくれればいいとさえ思った。
武の見舞いに行くと、幹夫の母がいた。
「ちょっと、幹夫、話があるの。」
幹夫の母は、幹夫を病院の外へ連れ出した。
「あなた、何考えてるの!!英里さんを、殴ったそうね。」
幹夫は、英里が母にその事をチクッたのだと思った。
「あの女がしつこいからだよ。だいたい、あの女はね、幸子から連絡があったときに、それを邪魔したんだよ!!
幸子を説得して、せっかく戻ってきてくれるって話になっていたのに・・・」
幹夫の母は、ため息をついた。
「それも聞いたわ。だけど、幹夫、英里さん、妊娠してるっていうじゃない。あなた、それなのに、英里さんを殴るなんて、何考えてるの?」
幹夫は、この母と話していても、イライラさせられるだけだと思い、冷たく言い放った。
「俺は、幸子だけがいればいいんだ。だから、あの女の子供なんてどうでもいい。死んでしまえばいいんだ。」
そう言うと、幹夫の母を押しのけた。
「幹夫!!」
母の悲痛な叫びなど、幹夫に届く事はなかった。
幹夫の中で、英里に対する憎しみがどんどん育って行った。
最初のコメントを投稿しよう!