失踪1日目

3/5
1550人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「ママ、今日は武に大事なお話があるの。」 武は、いつものように調合金のロボットを組み立てて、ヒーローごっこをしていた。 そんな中、幸子は武を呼び寄せ、自分の膝の上に乗せながら言った。 「ママね、武と、パパが大好きよ。」 「うん、僕もね、ママとパパが大好き。」 武の答えに幸子は、微笑みで答えた。 「でもね。」 幸子は、武や、幹夫を愛している。 だけど、もはや自分の心はボロボロになっていて、毎日宙に浮いたような気持ちになっていた。 あれは1年半年前。 夫が親友の英里と浮気をしていることに、気づいてしまった。 英里は、昔から人のものを欲しがる癖があった。 だから、相手が英里じゃなければ、幹夫に浮気の事を突きつけて、別れるように説得できたのかも知れない。 だけど、学生時代から、英里は、幸子と付き合った相手をことごとく奪っていった。 それでも、友達を続けていたのは、幸子のプライドだった。 さすがに、結婚した相手まで取らないだろうと思っていた。 だが、その性質は、いつまで経っても変わらなかった。 誘ったのは、おそらく英里の方から。 週に一度は、夫が英里の元へ行く。 それを知っていながら、知らないふりをしている。 そんな日々に、嫌気がさしてしまった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!