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そしてワタシもそのうちの1人だ。この町を離れられない代わりに、今もまだワタシのままで居られるのも、多分その不思議が関係しているのだろう。
今もなおここに居られると喜ぶべきか、ここを離れられないと悲しむべきか――その答えは未だに分からない。
けれど、ワタシがここに在る以上、ワタシに心が在る以上、楽しめるだけ楽しまないと損だろう。……つくづく得な性分をしているなぁ、ワタシは。まあ、今更な感はあるけれど。そこにこだわるのも、それこそ『今更』だ。
さあ、楽しみを探そう。
取り返しのつかない未来をなくした、その分を取り返すために。
愚かさの報いを探そう。
取り返しのつかない未来を投げ捨てた、その罰を受けるために。
どちらにしたって、きっと時間はたっぷりある。
ワタシが消えるその瞬間まで、ワタシがひとつところに留まることはないだろう。――いつ消えるか分からないのだから、だらけている時間はない。
気まぐれで掴んでいた柵を離れ、宙に飛び出す。
微かに聞こえる道路の喧騒と、重力に縛られない気楽さに、笑いが込み上げた。
隣のアパートに降りようか、それともスーパーまで飛んでいこうか、はたまたこのまま空中を漂っていようか――
さて、次はどこへ行こう?
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